甲斐駒ケ岳(標高2,967m)への登頂を果たした我々は、北沢峠へ下ってきて、こもれび山荘に宿泊し、翌日の仙丈ヶ岳(標高3,033m)への登頂に備えました。前日に泊まった山小屋の朝食が午前3時半ということで、驚きましたが、こもれび山荘では翌日の朝食と昼食がお弁当ということで、前夜の夕食の後に配布されました。翌朝のスタートは何時にしようか....Eさんと相談して、帰りのバス便の時間も考慮して、午前4時に起床して朝食をとり、準備が出来次第出発することにしました。この日の計画では、北沢峠から一旦大平山荘まで下り、薮沢の渓谷に沿って登っていくコースをとり、下山は山頂から小仙丈ヶ岳(標高2,864m)を経由して北沢峠へ下るコースをとることにしました。さて、この谷が薮沢の渓谷になりますが、上の方に雪渓が残っているのが見えます。
大平山荘から暫く道を進めると、少し薄暗い林床に小さい花が咲いていました。コイチヨウランのようです。ランの仲間の高山植物ですが、前々日に歩いた仙水小屋へ至る山道沿いにもたくさん見られましたが、そこと同じようにここにもたくさん自生していました。
これも、山道に沿って観察できたコバノイチヤクソウです。上で紹介したコイチヨウランとよく似ていますが、根元に葉がたくさん出ているこちらは、イチヤクソウ科に属する山野草です。
薮沢の渓谷には、まだ残雪があります。ここまで汗を掻きながら登ってきましたから、雪渓の上で暫しの涼を楽しみます。でも、アイゼンを付けていなかったので、危なく滑りそうになってしまったのです。
夏の渓谷を覆う雪渓は、やはり気持ちの良いものです。今回はその上を歩くわけではなく、雪渓を見ながら脇を登って行ったのですが、見た目にも涼やかです。
草むらの中に、白い花がたくさん咲いていました。夏の初めころからよく見ることができるシロバナノヘビイチゴですね。初夏の山で見られる山野草の中では定番と言える花ですが、もうそろそろ花期も終わりになると思います。葉の形を見るとイチゴの仲間というのがすぐに分かりますね。
薮沢沿いの登山道を歩いている時、反対側に流れ落ちる名前もない滝がありました。汗を拭きながらここで一息ついて、その姿をカメラに収めます。
これも、薮沢の登山道脇にたくさん生えていたオトギリソウです。高山に咲く花の図鑑を見ていたら、シナノオトギリではないかと思いました。でも、オトギリソウの仲間にもいろいろありますから、自信を持って識別ができているわけではありません。
こちらはアブラナ科のヤマガラシです。藪沢の渓谷沿いに、たくさん咲いているのを観察でしました。
この標識が立っているところから、薮沢と少し離れて馬の背ヒュッテへ続く山道へと踏み込んでいくことになります。ところどころで写真撮影をしながら時間をかけていますから、先を行くEさんと離れがちです。頑張って後を追わなければなりません。
またまた、ここで道草ではありませんが、タカネグンナイフウロの群生地に当たりましたので、ここでまたしばしの撮影タイムを取りました。でも、先を行くEさんは歩行速度の調整をしてくれているので(?)、少し頑張れば追いつくことができます。
さて、ほどなく馬ノ背ヒュッテに到着することができました。発動機のエンジン音だけが響き渡っていましたが、人影が見えません。仙丈ケ岳に登頂後、小仙丈ケ岳へ続く稜線を歩いている時、はるか下の山の中に、このヒュッテの屋根がよく見えていました。
馬の背ヒュッテから少し登ったところに、仙丈ケ岳へ登る道と馬ノ背の稜線に沿って続く丹渓新道への分岐がありました。このバイケイソウは、その分岐のすぐ脇に咲いていたものです。図鑑によると、ユリ科に属する高山植物で、この花の花弁は黄緑色をしていますが、白色の花弁のものもあるようです。
登山道を登りながら振り仰ぐと、緑に覆われた仙丈ケ岳の山容がよく見える場所に出ました。とても大きな山です。山頂の右下に仙丈小屋が見えています。我々はあそこまで登って休憩を取ったら、その上を右側に迂回するように稜線に上がり、一気に頂上を目指すことになります。
樹林帯に囲まれた登山道が次第に高度を上げていきます。足元に薄紫の花咲いていました。見つけた時にはソバナかなと思いましたが、花のつき方が違うようです。図鑑で確認したところ、シソ科のミソガワソウになるようです。
かなり高度を上げてきました。後ろを振り返ると、シラカバの樹林帯の向こうに、伊那谷を隔てて中央アルプスの山並みがくっきりと見えるようになりました。木曽駒ヶ岳から中岳、宝剣岳、空木岳へと続く山並みです。木曽駒ヶ岳にもお花畑が広がっているようですから、いつかは登ってみたい山になります。
はるか下の方に、薮沢の渓流が流れ下っています。その崖の上につけられた登山道の脇に、マルバダケブキの花が咲いていました。こんな姿をしていますが、キク科の高山植物になります。
登山道を登っていくと、ところどころにマルバダケブキの大群落が、何か所もありました。これもその一つですが、面白いものでこのように生育に適した場所では、一面に群生するようです。
今度は、北アルプスの山並みが見える場所まで登ってきました。左側のピークが焼岳(標高2,455m)でしょうか? 中央に穂高連峰とその右側に槍ヶ岳(標高3,180m)が並んでします。山登りをする人達の憧れの山ですね。
花弁が細い糸状に集まっていて、カラマツの葉のように見えることからカラマツソウと名付けられています。葉の形やそのつき方から、より高地で生育するミヤマカラマツではないかと思います。
薮沢の渓流に沿って咲いていたミヤマカラマツです。キンポウゲ科に属する高山植物です。撮影した写真を見たら、ミツバチが吸蜜のために飛来しているところが写っていました。
仙丈小屋の建物が次第に大きくなってきました。間もなく休憩ポイントに到着します。山の斜面にナナカマドの白い花が目に付きました。写真を撮影すると、その向こうに左にカーブする馬の背尾根と、その向こう側に甲斐駒ケ岳から続くノコギリ尾根が見えます。その向こうに霞んで見えるのが八ヶ岳の山並みです。
これは、藪沢渓谷沿いで撮影したセンジュガンピです。ナデシコの仲間の高山植物ですが、図鑑で確認すると名前の由来は奥日光の千手ヶ浜で最初に発見されたことからセンジュという名前が付けられ、製紙の原料となるガンピの花に似ているところからこの名前になったようです。
仙丈小屋に到着しました。時間は午前8時50分頃です。この日は、朝のスタートが早かったですから、ここでEさんはカップラーメンで腹ごしらえを、私は行動食のパンとコーヒーで栄養補給です。仙丈ケ岳の山頂はもうそこに見えています。一休みしたら、さあ出掛けましょう。